読んだら寝る

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堂々とやりたい権力闘争〜秋目人さんの騙王シリーズ

 それにしても金が欲しい。皆様こんにちは。
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賭博破戒録カイジより。

お金欲しいですか?私は欲しくて仕方がないです。私の亡くなったお祖父ちゃんも「金は寂しがり屋なんじゃ!集めれば集めるほど寂しくてもっと増えるんじゃ!」と常々言っていました。しかし、プロレタリアートの私が少しでも多くのお金を得るためには出世しなければなりません。辛い。

 出世は諦めかけている枯れた私ですが、せめて幼い息子には熾烈な競争社会で巧く立ち回ってもらいたいところです。

 「僕も一国一城の主になりたいよぉ〜。」というお子様には、「よいこの君主論」あたりをおすすめしてもいいのですが、君主論自体が「愛されるより、恐れられる方が良い。」とのたまい、目的のためには手段を選ばない政治家がマキャベリストと批判されたりもしています。

こんなお子様おらんやろ、となるよいこの君主論。覇道を唱えたいお子様にはおすすめの一冊。

 どうせなら(表向きだけでも)王道を歩ませて愛される子に育ててあげたいのが親心。そこで今回は(手段は兎も角表向きは)正々堂々と王位を目指す物語、秋目人さんの「騙王」シリーズをおすすめさせていただきます。

 

「騙王」シリーズ。既刊2冊。2冊目で一気にラノベ感が増した表紙になりましたが元々ラノベ寄りです。

 

 騙王シリーズは主人公のフィッラルドが父の跡を継いで王位につくために奮闘する小説です。というのもフィッツラルドは庶子であり、正当な王位継承権が無く、ついでに正当な王位継承権を持ちサプライズで毒矢をプレゼントしたりする弟思いのイケメンの兄がいます。ついでに周辺国との関係は基本的には戦争か停戦かといった具合のため、イケメンなれど無能な兄を蹴落とし、王位について国を安定させたいという愛国心溢れる主人公が魅力的です。

 こういった群雄割拠然とした国家間や王族間の争いを描く作品でありがちなのは、主人公の奇策で周辺国をバッタバッタと薙ぎ倒し諸国統一めでたしめでたしというスタートからゴールまで全力疾走みたいな内容ですが本作は少し趣が異なります。本作もプロローグが終わると自衛戦争のシーンから始まっていますが、あくまでも政争および生存の手段としての戦争なんですね。それを理解しているので、戦争に重きを置いている訳ではなく、全ての事柄に優先順位をつけた上で、自分の得意分野、不得意分野、自分が必要な仕事、部下に任せても問題のない仕事を分類して奇麗に行っている様は企業戦士としてちょっと憧れます。


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島耕作?より。やっぱり優秀な癖のある部下も御してこその企業戦士。企業戦士ってこういうのじゃない気はする。

 それなりの地位に就くに当たって必要となってくる要素は色々とあると思いますが、金、人脈、権威、後ろ盾、世間の好感度などとおおよそ私のような凡人でも考えつくような要素を一つ一つ丁寧に獲得していく様は丁寧にプレイする信長の野望みがあっていいですね。f:id:sannzannsannzann:20220831201857j:image

信長の野望 覇王伝より。みんな居なくなった。

 そしてある意味メインが身内との戦いである第一作「騙王」から、外敵、周辺国との戦いとなっていく第二作「謀王」も見所ですね。主人公のフィッツラルドは優秀ですが、あくまでも一国の中での優秀さであり周辺国には当たり前のように同等クラスの優秀な王族、軍人などが跋扈しています。その外敵とどう渡り合っていくのか、中々面白いところですね。

 個人的に好きな点は戦勝の見返りに主人公の兄の下に許嫁(人質)として送られてきた隣国の姫リズと主人公のやり取りです。自国の使命を自覚するリズとリズをどうにか利用しようとする主人公。そこにロマンスの欠片のような要素も見出だせなくはないですがそれ以上に、状況が変わった際にすぐさま判断し行動を起こす主人公と行動の遅い兄の対比が際立ち、明確なブレインもいないのに自ら未来を予測し動ける主人公の魅力が光ります。

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蒼天航路より荀彧。欲しいよねブレイン。

 そして凄まじく個人的な話なんですが、「限られた小遣い」「加齢による集中力のなさ」「仕事や家庭による時間の制限」を考えると、昔はよくやっていた漫画の一気読みや購入や小説でもシリーズの一気読みが厳しくなってきています。そんな中、いわゆる「単巻ラノベ」の株価が東証私部でストップ高になっています。電車で3回出勤するくらいで一冊読み終わりますし、「Tarzan」や日経新聞、意識高めの新書や司馬遼太郎を読んているリーマンに単巻ラノベで差をつけてみるのはどうでしょうか?

何度読んでいてもたまに読み返したくなるのも単巻ラノベの特徴。

 

そろそろ独り立ちの頃かな?と考えている方、大きめの野望を宿していてそろそろ打って出ようと思っている方、よければ出勤途中にでも騙王シリーズを読んでみてはどうでしょうか?