読んだら寝る

好きな作家、本、マンガについて紹介

娯楽純度100%な楽しいゲームブログ〜赤野工作さんの「ザ・ビデオゲーム・ウィズ・ノーネーム」

 最近社内の試験前で若干社内の若手(30代前半〜)がピリピリしてます。今後の昇進に絡んだり本社勤務に絡んだりするのでさもありなんという感じですが。社内には「いやぁ〜業務ばかりで全然勉強できてないわ〜(めっちゃしてる)。」とアピールする輩が蔓延り、悲しいことに私も「勉強できてないわ〜(本当に)。」と言わでもがななアピールをしてます。そんな感じで最近意識高めな「DX」の本とか読む羽目になってます。デラックス以外の読み方合ったんですね、これ。f:id:sannzannsannzann:20240512221604j:image

山田しいた、ITおじさんより。こういう奴かと思ってた。

 直属の上司に「最近読んだ本は?」って訊かれて、「地雷グリコ」「致死率十割怪談」「冬季限定ボンボンショコラ事件」とか答えてたんですが、周りの同僚は「ザ・ゴール」とか「サピエンス全史」とか読んでる様で肩身が狭いです。私の方が旬を抑えてる感じがするんですが。

今(Xとかでも)熱い3冊だと思ったんですが上司には不評。

クリティカルパスとか何やらで需給を安定させるとかホニャララな感じの本。同僚よりだいぶ前に読んだはずなのに欠片も覚えてない。

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「読んだことある本自慢されて黙ってられるか!!欠片も覚えてないけど!」

 さて、趣味が読書と言って憚らない私ですが、職場では不評です。いや、流石に仲の良い同僚を除いたら真面目にビジネス書だの新書だのの話してます。ただ、現代ビジネスをおさえとくためだけのための読書って苦痛なんですよね。食いたくない物食わされてるというか。きっと社会人になった遠子先輩とかもビジネス書を泣きながら食べてるんでしょう。

本を食べるタイプの文学少女、遠子先輩。

「読書は教養を高めたり昇進するための物じゃねぇ!余暇をダラダラ過ごしたり物語を楽しむための物なんだ!俺とビブリオバトルで勝負だ!」という気持ちですので、気がついたらページを捲って読み直してしまう娯楽純度100%の作品、赤野工作さんの「ザ・ビデオゲーム・ウィズ・ノーネーム」を紹介します。

 本作は、「2115年に過去のレトロゲームクソゲー)を紹介するブログ」という体の小説です。というかブログの文章化まんまです。本作の主人公(≒ブログ主)は割と高齢のおっさんで、溢れるゲーム愛をブログという形で表現しています。本作に登場するゲームは、話題になりながらも「クソゲー」の烙印を押されたゲームたち。その紹介する範囲は2020年代から2080年代まで多岐にわたり、ブログ主のゲーム愛が伺われます。当然ですが全て「架空のクソゲー」です。本作に登場したゲームを覚えていても、社内の昇進に影響はありませんし、なんなら脳の容量の数%を「存在しない未来のクソゲー」が占めることになります。

 さて、本作で紹介されるクソゲーはどれもこれも非常に癖があります。今ですら「こういうクソゲーがありました!」ってYouTubeニコニコ動画で紹介されてたりしますよね。そういうクソゲーは人から紹介されたり、ましてや自分がプレイしていると妙に記憶に残るものです。

 本作では「福井県鯖江市によって街に導入されながらもシェア争いに破れたARゲーム」「新興宗教教徒の信心を図るためのゲーム」「ナノマシンが強制的に主人公と同じ感動を味あわせてくれるテキストゲーム」「世界で唯一聖母が降臨したゲーム」「ステージが進むたびに音や光といった演出が消えていくゲーム」等など、ぱっと思い出すだけでも印象深いクソゲーが大体20本くらい紹介されています。そのどれもが相応のリアリティとブログ主の溢れるゲーム愛で事細かに、当時の反応や社会情勢を含めて語られます。「架空の出来事としてのリアリティ」「架空のゲームとしてのリアリティ」「架空の趣味ブログとしてのリアリティ」が全部カンストしてる稀有な作品です。

 これが仮にブログがアップされた年に読んでいるとしたら、ゲームを通して当時の状況がわかって勉強になっていたことは間違いないくらいのリアリティです。しかし、まぁ全て架空ですのでそれも望めないのですが。延々と存在しない物について、そして、ブログ主のゲームに対する過剰な愛を通して見る架空の未来が何とも心地良く、「これぞ娯楽だ!」という気分にさせてくれます。「小説は娯楽なんだから役に立たなくて良いんだよ!」って気持ちを強めてくれます。脳の容量なんか無駄遣いしてなんぼだよ!


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すごいよマサルさんより、多分一生脳内から消えない役に立たない文章。

 楽しい小説を、楽しいゲームを、何でも自分が楽しめたら人に紹介したくなるものですが、本作は楽しんだうえでちょっと人に内容は伝えづらいところが暗い楽しみって感じがして良いです。「最近うちのコが大きくなってさぁ」とか話してる同僚に、「いやぁ〜架空のクソゲーがリアルでさぁ〜」とかぶっ込める人中々いないじゃないですか?

 目的のある読書、勉強に疲れた方、脳の容量を余している方に是非おすすめしたい1冊です。

 

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