私が中学3年生くらいの頃からでしょうか、恋愛漫画を好んで読むようになったのは。いつの間にか本棚の半分くらいは恋愛漫画の時期がありました。中学1年生くらいの頃はライトノベルをレジに持って行くのすら恥ずかしかったのに、士別れて三日なれば刮目して相待すべしって奴ですね。ちなみに私の初めて(自分でレジに持って行ったライトノベル)は零崎双識の人間試験でした。
漫画は平気なのにライトノベルは「Theオタク」って感じがして滅茶苦茶恥ずかしく感じた記憶
恋愛漫画に没入したのは受験勉強とラグビーという恋愛と一切シナジーが無さそうな組み合わせしか無い日常で潤いが無い故ですね。保湿ってやつです。
そんな訳でマニュアルでの脳内シミュレーションはばっちりでも実戦経験の無いルーキーが男9割みたいな工学部の某学科という戦場で恋愛をするとどうなるんでしょうか。
↑こうなるんですね。もう恋愛漫画なんて信じないと思っていた私の心に吹いてきた風のようなマンガ、本日紹介するのは大瑛ユキオさんの「ケンガイ」です。
全3巻完結済み
ケンガイは、就職活動に疲れて大学を休学し、某レンタルビデオ店で働く忍者みたいな苗字をした男子、伊賀と仲間内で「あいつらは無い。」「あいつらじゃ〇たない。」みたいに言われている女性、白川さんとの恋愛の様子を描いたマンガです。
さて、抱かれたくない男ランキングを週刊誌がいまだにやってるのはどうなの?とか倫理的な価値観が脳の電極に直接入力されて日々アップグレードされてきている昨今ですが、あらすじの時点で漂う「すれ違う女性の顔を見て仲間内で点数を付ける」的な、まさしく「抱ける女」を仲間内で話すあたり、このお話は平成中期〜後期頃の話です。平成だったらそれはセーフだって訳ではないんですが。
仲間内での盛り上がり。
そんな皆が折りたたみケータイを使ってアンテナを顎でしまったりバリ3とか言ってた頃、仲間内で圏外扱いされてる白川さんはどんな人物かと申しますと、映画鑑賞に全てを捧げてその他何者も信じないみたいなヤマアラシみたいな女性です。
友人にも気にされるゾンビぶり。
主人公の伊賀君は絵柄通り?いたって普通の正義感を持った大学生がちょっと現実と折り合いがつかずにバイトに明け暮れてるという「普通の良い奴」なんですが、入ったバイトがやけに飲み会好きだったりするし、ちょっと派閥っぽくなってるし微妙に人間関係ややこしいバイト達を何とか波風立たないよう抑えながら働いてる社員は大変そうだしで「折角、一旦休もうって入ったバイトがこれかよ。」というちょっと不憫な奴です。
バイトなのに人間関係にまで気を遣って働きたくなさ過ぎる。
そんなちょっと明るいパリピ〜サブカル系には働きやすそうな職場で、思わず「圏外」に惚れた伊賀君の悪戦苦闘を描くのが本作のメインストーリーです。大筋とは関係ない上に今の若い子には全然想像も付かないと思うんですが、某レンタルビデオ店がこういう明るい職場だった時期が確実にあるんですよ。この動画メインの時代にわざわざテキストブログ読んでいる若さと渋さの間に揺れるナイス30‘sの方々ならわかって頂けると思うんですが。
在りし日日。
本作の魅力はまさに伊賀君の悪戦苦闘ぶりですね。伊賀君は普通に元カノとかいて何となく遠距離になったから別れたりとか恋愛経験もそれなりにあるんですが、まぁ相手は怪奇ゾンビヤマアラシなので全くその時の経験は通じないんですよ。
通じない。
それでも彼が白川さんに一途なのは単純に惚れたためなんですが、それ以上に白川さんははたから見ていても「おもしれー女」なんですよ。客観的に見ると別に容姿が悪い訳でも無いみたいなんですが、和せず同ぜずというかNOと言える日本人というか、傍から見る分には今の時代なら白川さんの方が正しい様に見えるんですが、そこは当時の同調圧力を感じて貰うと、あ、村社会には馴染めない子ってなる筈です。そういう意味でも今、在りし日々の記憶がある内に読むべき作品なんですよ。そこ感じないと白川さんがおもしれー女じゃなくて現代日本で強い女のシンボルみたいになっちゃう。作中でも語られてるんですが、モノにすれば楽しい日々が待ってるであろうことは想像に難くない魅力的な女性なんですよ。
この女、笑うと可愛い。こんなん見たら俺だけが知ってる顔だって惚れるもやむ無し。
深夜に居酒屋で映画についてゆっくり語れる女、滅茶苦茶その辺に居そうで意外と居ないじゃん?
俺も一緒にピザ食いながらラス・メイヤー観たいよ。
ベランダでタバコ吸いながら休憩したい。
伊賀君はキラキラした女子の多い職場で、今までと同じ様な恋愛をするんじゃなくて、おもしれー女と見たことない日常にダイブしたいんですが、このヤマアラシみたいな女はゾンビなので毒の針を常に広げてるんです。その針が「開いてるな、あっ、ちょっと閉じた、と思ったらまた開いた。」って感じを味わうのが本作の醍醐味です。
恋愛、めっちゃ簡単って人は、あんまり居ないじゃないですか?明らかに恋愛強者な伊賀君が悪戦苦闘している様は一度でも恋愛が上手くいかないと思った人には響く物がある、感情移入できると思うんですよ。ただ、そんな恋愛で脳が馬鹿になってる日々の中で、奇跡的に上手くいって喜んだり落ち込んだりが思い返してみると恋愛の一番楽しかった頃じゃないでしょうか?
伊賀君はキミに語りかける。
恋愛が上手くいくためには、まず白川さんと仲良くなりつつしょーもない仲間内のノリと距離を置く必要があり、悪戦苦闘しながらもその2つを何とかこなしている伊賀君は多分会社員になっても無難な人付き合いを出来るようになるんだろうなとか思いますね。完全に彼の親目線ですが。
そして、微妙に癖になるのが伊賀君の友人宍戸です。
登場シーンは彼岸島の西山を彷彿とさせるし見ての通り頭の良い奴だ。
彼は、ふらっと伊賀君のバイト先に現れては日活ロマンポルノを借りていったり人妻を口説いたりしてるんですが、伊賀君の恋愛相談に対しては医学部の学生らしさを出して的確にアドバイスをしてくれます。
的確なアドバイス。
やっぱり西山じゃないか。
実際、割と突撃しがちな伊賀君に第三者の目線でまぁこんな感じだろって変に気負わないアドバイスをしてくれる有り難い友人です。
この「病名つけようと思えばつけられるんだよ、ただ、そんな人ザラにいるけどな。」ってセリフ、達観してて好き。
物語に対してギミックみがあると言うか若干神の視点からのアドバイス感もあるが伊賀君が良い奴過ぎて、こいつをピックしたんだ感もあって良い。
読み返してみたらこいつずっとアルカイックスマイルというか常に下品でない位の笑顔で居てマジで菩薩みたいに存在してたんですが、普通こんな友人ガチャ引けないんですよ。伊賀君が普通に行きてきた大学時代の積み重ねが彼の人生を後押ししてくれてる感が非常に良いんです。
元カノとこんな感じで会話できる?
読めば読むほど伊賀君が真っ当な奴に思えてくる。
悪戦苦闘するおもしれー男、伊賀君が怪奇ゾンビヤマアラシの傍らで毒針を刺されずに眠ることができるのか、是非その目で確かめて頂きたいです。甘酸っぱい思い出が風化する前に、折りたたみケータイとアンテナ事情的な言葉が死語になる前に、そして某レンタルビデオ店がサブスク配信に負けてレンタルから撤退する前に是非読んで欲しい作品です。
↓良かったら読書のバナークリックお願いします。自己肯定感がマシマシになります。




















