もう30半ばになろうとしているのに、どういう大人になろうかと考えることが増えてきました。社会人としてあんまり働いてきた実感は無いんですが、ゲームは割とやってきた気がしますので、働いていると自分のパラメータが見えるように感じます。昔は自分の知力とか体力のパラメータが高く感じていたんですが人生も中盤になってくると体力も落ちて、知力は人生も2章に入るとそうでもなかったということに気が付き、逆に大して重視して来てなかったコミュ力が仕事の円滑化に一役買っている現状を見ると、人生何が起こるか分かりません。私は今、職場では水戸黄門御一行のうっかり八兵衛のポジションに居ます。うちのボスにとって不幸なのは助さん格さんが居ない所ですね。
昔は助さん格さんになれると思っていたうっかり八兵衛も人生はまだまだ続くので、スキルアップを図ってうっかり十兵衛くらいにはなりたい所です。それに自分のうっかり具合を棚にあげて日々趣味という名のお団子を頬張ってこれはこれで良い生き方だよと誤魔化して行きたい所です。まぁつまりはようやく自分との付き合い方が分かってきた気がして中々楽しいです。
さて、今回紹介するのはダメな大人達の再生を描いた鈴木みそさんのマンガ「限界集落(ギリギリ)温泉」です。
(全4巻完結済み)
ギリギリ温泉は、下田市の限界集落にある借金まみれの旅館「山里館」、自治体に買い上げられ廃業を待つだけの旅館を自殺するする詐欺でやって来たメンタル不安定な有名コスプレイヤー、逃げてきた元ゲームプロデューサーそしてコスプレイヤーを追ってきたおたく達が再生する物語です。
旅館の主人は妻と過ごした旅館が自治体の老人ホームとしてハコモノ行政の塊みたいな施設になるよりは小説で一発当てて旅館を守ろうと超現実逃避を決め込んで居ます。
紛うことなきダメ人間だよ。
主人公の溝田は炎上したゲームプロデューサーとして都会から逃げて下田の洞窟で地元の農家の方々から野菜や果物を失敬して暮らすという残留軍人みたいな温泉に釣られて現実逃避している親父を助けることになります。
昔取った杵柄でダメ親父を助ける溝田
借金を返し山里館を盛り返すには勿論営業を初めて閑古鳥を追い出すしか無いのですが、伊豆と言いつつ修善寺なんかの生きてる観光地ではなく、高齢者しか居ないまさしくタイトルにもある通り、ギリギリの土地柄であって客が来る可能性はほぼ無いに等しい状況です。
限界な土地
そんな土地だからまぁ借金を返すあてなんてまるで無いのですがのらりくらりと貸主をだまくらかしているうちに、人生が上手く行かなる都度逃げてきたメンタル限界コスプレイヤーや私生活は全部そのコスプレイヤーにぶん投げている限界オタク等ダメ親父、夜逃げプロデューサーに負けず劣らずのギリギリ人間たちが何の因果か伊豆に集い始めます。
絶対死ぬ気ないだろとか言ってはいけない。
一周回って行動に起こす辺り偉く感じる。
溝田は壊れたお姫様、お姫様の追っかけのオタク達、妙に嘘に長けた器用な小学生、見た目だけは誠実な宿屋の主人のダメ親父などおおよそパーティーを組むには不安のある人間を使って山里館の復興を目論むというのが大筋のストーリーです。
不安しか無いパーティー
「観光資源も何も無い限界集落は静かに滅びるしかないのか?」というのはこのマンガが描かれた2009年頃より余程深刻になっていますが、「何も無い土地だからこそストーリーを作る必要がある。」という現代にも繋がる町おこしの本質みたいなものが描かれているのは流石の予言ぶりです。細部はネタバレになりますが、Twitterの政治利用何かは当時は考えられても居なかったように思います。逆にニコニコとかだったか?何れにせよ余程某7/5より未来を見ている。
さて、この物語で特に私が好きなのは持たざる者達が、自らを受け入れて持てる者に対抗する流れですね。先も述べた通り、主人公の溝田は敏腕プロデューサーでありながら、炎上したゲーム開発から逃げて伊豆に落ち延びた人間であり、周りの人間もどっこいどっこいのダメ人間ですが、鶏鳴狗盗と申しますか、長年生きてくるとどんなダメ人間でも長所の一つや二つはあるもので、どんなに悲しい人生でも生きている限り人生は続くので、短所を認めつつ長所を如何に活かすかが重要になってくる訳です。
逃げた自分
逃げなかった今回
オタクも嘘つき小学生も自らを受け入れる。
何なら敵も成長する。
そういう意味ではだましだまし旅館にやって来るオタクから搾取しようとするのではなく各々が自分自身と向き合い強みを使って、客がずっと続くような魅力的な町に、宿にしようとするあたり、登場人物がダメ人間しか居ないのに超王道ストーリーしていて良いです。
ドリフターズで信長も反省してたし
地上最強の男もこう言ってますし。
逃げてきた男&女たちと漠然と生きてきたオタク達が自分のこれまでの人生を総括し、ステップアップしていくというこの物語は、笑って読んでいた筈なのに「俺は真面目に自分の人生を生きているのか?」と突きつけられます。結構つらい。
ハチミツとクローバーでも竹本がずっと「あなたはだあれ?」って言われてたし…。
天才が努力してるマンガとかあんまり感情移入できないと思いますが、このマンガ滅茶苦茶ダメ人間達の再生の物語なので、「このダメ人間達自分よりよほど偉い。」と思った時点で、ちょっと自分を棚に上げないと読むのが辛くなるくらいの王道ストーリーですがともあれオススメです。
ただし一点注意が必要なのが、その描写です。「陰キャやオタクが集まって問題解決☆」みたいなテンプレがようやく生まれた頃に描かれた本作は古いオタク描写がかなり鼻につくかもしれません。
ただ、作者の鈴木みそさんと言えばkindle等の電子書籍サービスに早くから目を付け、漫画家の印税や版権についてのこれからを整理したマンガ「ナナのリテラシー」が有名で、10年ちょい前のマンガなのに正確に現在の電子書籍サービスの潮流を当てているあたりかなり時代の最先端を行っていたマンガでした。
ナナのリテラシーより作者本人
ギリギリ温泉もTwitterが出始めた頃の話であり、何なら4年くらい前にあの「電車男」が流行っていたことを考えると当時としては超最先端だったんですよ。
電車男本編って電車化してないんだ…。
推し活なんて綺麗な言葉も無く、オタク≒蔑まれる存在で隠すかバリバリオタクファッションでいるかの二択だった汚いオタク達の時代描写を含めて楽しんでいただきたいです。
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