読んだら寝る

好きな作家、本、マンガについて紹介

王ドロボウJINGの思い出

 小学生の頃に買っていた少年誌はコロコロコミックスだったんですが、不思議と各連載マンガの単行本はあまり買っていませんでした。本誌も取っておいてあるのであまり必要性を感じなかったのかもしれません。代わりに買っていたのは従兄に薦められたコミックボンボンの「サイボーグクロちゃん」なんかでしたね。そして少年時代の私の中のマンガかくあるべしという作品は熊倉祐一先生の「王ドロボウJING」でした。

王ドロボウJING全7巻

 王ドロボウJINGは、伝説の王ドロボウの末裔である少年ジンとその相棒で鳥のキールが様々な土地で盗みを働くという話です。

 ジンが盗むものは、「人魚の涙という宝石」「時計じかけのぶどう」「太陽石」「望む夢を見ることができる夢玉」「表情を失った王妃のためのとっておきの仮面」などなどで、その舞台は「ドロボウの都」「幽霊船のカジノ」「時計に支配された街」「滅びた不死の都」「仮面武闘会を催す街」「電力を支配する雲の王国」等、非常に多彩です。


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独自の標的。

 とりあえず何が一番格好いいかというと、その類を見ないデザインです。街、モブキャラ、文化が今まで見てきたものと全く異なっているのです。幼心ながらに「これは何かモチーフがあるに違いない!」と思わせる舞台が、「これはきっと大人が読んでも楽しいに違いない。」と思わせてくれました。

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特に見開きは格好いい。

「今は何がモデルか解らないが、俺が大人になる頃にはきっと理解できる筈だ!」という知識への、物語の世界への憧れがこの漫画を起点に広がっていきました。現に様々なシーンに、「ピーターパン」「星の王子さま」「時計じかけのオレンジ」「チャップリン」等の物語や様々なカクテルやお酒のモチーフが含まれており、今でも新たな発見がないかじっくりと読み込みたい作品なんです。

 そして、デフォルメされた独特な舞台に存在する魅力的な敵味方。個人的に好きな敵キャラは「はぐるまもんばん」「メダルド子爵(右)(左)」「仕立て屋」辺りですね。襲いかかってくる時の文句も気が利いててカッコいいんですよ。


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様々な敵キャラ。

 

また、各話ごとに絵柄が変化し続けることも魅力です。少年マンガ的な絵柄だった初期、ファンタジー要素が増した中期、そして芸術性すら感じる後期。何故か絵柄が一所に落ち着くという訳ではなくて常に変化し続けているんですよね。作者の熊倉祐一さんは「毎回思い出しながら描いている。」という噂もありますが、何にせよ「物語が変わった。」「時系列が変わった。」ということを否が応でも感じさせてくれます。


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1巻と7巻。絵柄が変わりすぎ。

 そして、女の子と遊ぶのは気恥ずかしいと感じていた小学生な自分と比較して、女性に対してスマートに接し、何なら惚れられるジンは「いつかこんなふうになりたいがきっと決してなれない憧れの像」として君臨していました。毎話ごと「ジンガール」と呼ばれるヒロインが登場するんですが、大体最初はほぼ敵対しつつも、最後は気持ちまで持ってかれるんです。


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様々な「ジンガール」達

そして読者がジンを見る目線は「ジンガール」からの目線とほぼ同じです。惚れてまう。f:id:sannzannsannzann:20240125212305j:image

ジンガールの一人になってしまう…。

 

ちなみに、いつ出たのかもいつ連載してたのかもわかりませんが、いつの間にか出版されてたちょっとだけ大人向けになった「king of bandit JING

(第2部全7巻)

 モチーフや言い回しが更に大人向けになり、ある意味全年齢向けになった第2部。少年マンガから入るのはちょっと…と思う方にも是非読んで頂きたいです。恋愛税が導入されてる街、過去を持たない人達の街、ある日突然消えていなくなった王様「蒸発王」が帰還した時のために究極のシチューを作ろうとしてる国の話などか好きです。

 この世界観の虜になった私は当時王ドロボウJINGのゲームもやってました。ゲームもゲームで「他と違う」感じがあってぐっと来ました。

王ドロボウJING Versionはデビルとエンジェルの2つ。

このゲームはある土地を訪れたジンとキールがその土地に隠された財宝を狙うというストーリーで、基本的にはポケモンのような育成ゲームなのですが、戦闘前に賭ける手持ちモンスターを選んで勝てばモンスターが手に入り、負けると育てたモンスターを失うという「モンスターベット」というちょっと独特なシステムに、「天使を掲げる街と悪魔を掲げる街」「世を捨てた「むじん」が住むむじん島」「眠ることが生き甲斐の秘密組織、ZZZ団の砦」「ねじ巻き鳥が住む島」等、漫画にも劣らない濃厚な世界観のステージがあり、原作の雰囲気を一切損なうこと無くゲーム化がなされています。

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ステージ画面。格好いい。

 それもそのはずで基本的なモンスターデザインやゲームのデザインは作者ご本人がなされています。私が好きなモンスターはたいほうごうとうとはだかの王様です。

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たいほうごうとう、コミックボンボンに投稿された採用キャラ

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服まで脱いでしまった「はだかの王様

 

まとめたのが誰かわからない全モンスター図鑑のリンク。まとめた方と語り合いたい…。

 

また、「あくまはにどしぬ」「どうけのなみだ」「もろびとこぞりて」「ロング・グッドバイ」「あんらくし」「こうちゃきのこ」等他のゲームでは全く見ない技名の数々。

「クラスでも多分俺しか読んでないし、俺しかこのゲームをやっていない。」という自意識が子どもの自分にインストールされましたね。

 何度もクリアしすぎてフラグやモンスターを仲間にする条件等、将来的に一切使用しない知識が私の脳内メモリの中の少なくない容量を圧迫していますが、このままだと一生出力する瞬間がないのでアウトプットしてみました。誰かと王ドロボウJINGのゲームについて語りたい。原作に登場したキャラクターを2体合成しないと進まないシナリオの理不尽さとか。ポセイドンレイジとふたごのらいじんどっちが好きかとか、ジンとキール以外に何のモンスター使ってたとか。

 そして、アニメもやっていたりと、中々手広いのですが、マイナー界のメジャーだからなのか特段人が語ってる姿を見ないですね…。

アニメもやってたり。

 私は誰かがマイナーな物について熱く語っている人を見ると「そんなマイナーなもの誰が知ってるのか?」と思う反面、「調べてみようか。」と思うタイプです。知っている人、知らない人それぞれに届いたら嬉しいです。