ライトノベルが好きです。能力バトル、ラブコメ、ホラー、仮想戦記にセカイ系面白ければなんでもござれで読みます。そんなわけで少し前に評判だった「妖精の物理学」も発売当時に買って、そして色々忙しくて積んでいました。連日の出張でやることがなく合間に積ん読を消費する生活の中、ようやく妖精の物理学までたどり着きました。お、面白いぃ。無頼の月日今は悔いるのみ…。
自認:伊良子
と言うわけで、今回紹介するのは早逝されたライトノベル作家、電磁幽体さんによるデビュー作にして遺作「妖精の物理学〜PHysics PHenomenon PHantom」を紹介します。
天才物理学者、灰谷義淵が全ての物理現象は見えない『現象妖精』が引き起こしていたことを証明してから3年後、日本は『現象妖精』による未曾有の大災害によって7つの都市を失い、国連の常任理事国によって分割統治されていた。そんな中、重力が逆転した街神戸だけはいずれの国の統治も受けず、世界的大企業の支援をもって逆さまながらも平和な生活を享受していた。なんか丁寧に説明しようとしたら壮大なSFか宇宙オペラの冒頭みたいになったな…。安心してください。この作品、超エンタメ作品です。
現象妖精はゴスロリっぽい服を着て、主食は甘いもので、そして甘いものが尽きない限りは死ぬことはありません。そしてある一つの物理現象を司る存在です。人々は、そんな現象妖精を具現化して有効活用し生活しています。
主人公の少年カナエは何故か何の物理現象も司っていない妖精レヴィと不登校気味ながらも仲良く暮らしていました。ある日、お世話になっている科学教師のおつかいで普段行かない研究階層に脚を踏み入れた結果、凍りついた現象妖精と出会います。彼女と話している内に急に謎の集団に襲われたカナエとそこで出会った現象妖精のゆきは契約を結びつつ、その場から逃走を図ることになります。
本作の魅力は、作り込まれた世界観と、それを感じさせない程のエンタメ性だと思います。現象妖精レヴィとのコミカルかつ楽しい会話劇、現象妖精の能力を使用した能力バトル、そして少女との出会いにロードムービーのような逃走劇。いや、こんなに面白いのに筆舌に尽くしがたいな!基本は能力バトルに主題を置きつつ、ラブコメ、ボーイ・ミーツ・ガールにセカイ系のエッセンスを少々といった感じでしょうか。とにかく、色々な層に刺さる作品であることは間違いありません。というか多分ゼロ年代作品が好きな人に刺さります。
とにかく7つの都市を滅ぼした原初の現象妖精、「重力と斥力」を司る敵と主人公が出会った「氷と静止」を司る現象妖精ゆきのバトルが30代の中2病に刺さるんですよ。まず、好きですよね7つの何かとか。大罪の数の敵とか。私は殺し名が好きです。
そして更に我々は好きじゃないですか、口上。スパロボのさぁ技出す前のやつとかさぁ。本作でも随所で出てきますよ口上。ぐっと来るんですわ。
(幻想少女大戦より)
サモンナイト3よりアルディラ、
戦闘前に謎のキューブ出して「アクセプト!」って叫ぶ。
本作ではこんな感じ。
「最上位要請『事象の地平線』を起動するわ ──少しの間、お別れよ」
──最上位要請『絶対空間』を起動します ──少しだけ、じっとしててください──
(妖精の物理学より)
これは30代にはかなり来る。いや結構若者向けなのでキツいという自分もいるんですが、それを差し置いて中2の自分に響くんですよね。多分ですが文章力のなせる技かもしれません。昨今の一人称視点が多めに感じるライトノベルの中、三人称視点で地の文も上手い。作者さんが早逝なさったということで、校正はかなり少なめと聞いていますが、それでこの文章力かと普通に驚嘆します。
作品の最後に続きを匂わせて恐らく7名の妖精がどうなるかという所まで描かれる予定だったんだろうな、そうなるとちょっとしたロードムービーみたいだなと思ってたので残念です。しかし、単巻の読み切りライトノベルとしても白眉です。ゼロ年代に飢えている方、是非手に取ってみて下さい。
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