読んだら寝る

好きな作家、本、マンガについて紹介

惜しまれる傑作〜電磁幽体さんの「妖精の物理学〜PHysics PHenomenon PHantom」

 ライトノベルが好きです。能力バトル、ラブコメ、ホラー、仮想戦記にセカイ系面白ければなんでもござれで読みます。そんなわけで少し前に評判だった「妖精の物理学」も発売当時に買って、そして色々忙しくて積んでいました。連日の出張でやることがなく合間に積ん読を消費する生活の中、ようやく妖精の物理学までたどり着きました。お、面白いぃ。無頼の月日今は悔いるのみ…。

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自認:伊良子

 と言うわけで、今回紹介するのは早逝されたライトノベル作家、電磁幽体さんによるデビュー作にして遺作「妖精の物理学〜PHysics PHenomenon PHantom」を紹介します。

 天才物理学者、灰谷義淵が全ての物理現象は見えない『現象妖精』が引き起こしていたことを証明してから3年後、日本は『現象妖精』による未曾有の大災害によって7つの都市を失い、国連の常任理事国によって分割統治されていた。そんな中、重力が逆転した街神戸だけはいずれの国の統治も受けず、世界的大企業の支援をもって逆さまながらも平和な生活を享受していた。なんか丁寧に説明しようとしたら壮大なSFか宇宙オペラの冒頭みたいになったな…。安心してください。この作品、超エンタメ作品です。

 現象妖精はゴスロリっぽい服を着て、主食は甘いもので、そして甘いものが尽きない限りは死ぬことはありません。そしてある一つの物理現象を司る存在です。人々は、そんな現象妖精を具現化して有効活用し生活しています。

 主人公の少年カナエは何故か何の物理現象も司っていない妖精レヴィと不登校気味ながらも仲良く暮らしていました。ある日、お世話になっている科学教師のおつかいで普段行かない研究階層に脚を踏み入れた結果、凍りついた現象妖精と出会います。彼女と話している内に急に謎の集団に襲われたカナエとそこで出会った現象妖精のゆきは契約を結びつつ、その場から逃走を図ることになります。

 本作の魅力は、作り込まれた世界観と、それを感じさせない程のエンタメ性だと思います。現象妖精レヴィとのコミカルかつ楽しい会話劇、現象妖精の能力を使用した能力バトル、そして少女との出会いにロードムービーのような逃走劇。いや、こんなに面白いのに筆舌に尽くしがたいな!基本は能力バトルに主題を置きつつ、ラブコメ、ボーイ・ミーツ・ガールにセカイ系のエッセンスを少々といった感じでしょうか。とにかく、色々な層に刺さる作品であることは間違いありません。というか多分ゼロ年代作品が好きな人に刺さります。

 とにかく7つの都市を滅ぼした原初の現象妖精、「重力と斥力」を司る敵と主人公が出会った「氷と静止」を司る現象妖精ゆきのバトルが30代の中2病に刺さるんですよ。まず、好きですよね7つの何かとか。大罪の数の敵とか。私は殺し名が好きです。

 そして更に我々は好きじゃないですか、口上。スパロボのさぁ技出す前のやつとかさぁ。本作でも随所で出てきますよ口上。ぐっと来るんですわ。

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(幻想少女大戦より)

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サモンナイト3よりアルディラ、

戦闘前に謎のキューブ出して「アクセプト!」って叫ぶ。

 本作ではこんな感じ。

「最上位要請『事象の地平線』を起動するわ ──少しの間、お別れよ」

 

──最上位要請『絶対空間』を起動します ──少しだけ、じっとしててください──

(妖精の物理学より)

 これは30代にはかなり来る。いや結構若者向けなのでキツいという自分もいるんですが、それを差し置いて中2の自分に響くんですよね。多分ですが文章力のなせる技かもしれません。昨今の一人称視点が多めに感じるライトノベルの中、三人称視点で地の文も上手い。作者さんが早逝なさったということで、校正はかなり少なめと聞いていますが、それでこの文章力かと普通に驚嘆します。

 作品の最後に続きを匂わせて恐らく7名の妖精がどうなるかという所まで描かれる予定だったんだろうな、そうなるとちょっとしたロードムービーみたいだなと思ってたので残念です。しかし、単巻の読み切りライトノベルとしても白眉です。ゼロ年代に飢えている方、是非手に取ってみて下さい。

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プロレスについて話してみよう〜ヒラマツミノルさんの「アグネス仮面」

 皆さん、プロレスはお好きでしょうか。私は普通くらいです。平成一桁ガチおっさんの言う普通は、アントニオ猪木、ジャイアント馬場、長州力、藤波辰爾、橋本真也、小川直也、グレート・ムタ、獣神サンダー・ライガーなどなど列挙しろと言われれば取り敢えずひたすら列挙できますし、かけてみろと言われればサソリ固めや4の字固め位は何も考えずともできる。そんな感じです。

 男兄弟ばかりで育った上に従兄弟も男ばかりということでよく40分一本勝負が親戚宅で繰り広げられてました。よく割れなかったなガラス。

 つまりは好きと嫌いの間に一定以上の知識はある。という感じですね。今回はそんな私と同じ平成一桁ガチおっさんに向けて最高のプロレス漫画、ヒラマツミノルさんの「アグネス仮面」紹介して行きます。

 全8巻、完結済み

 

 海外修行から帰ってきた中堅レスラー山本仁吾は、帰国と同時に自分が所属していたプロレス団体「大和プロレス」が「帝日プロレス」によって潰されてしまったことを知ります。残務整理の一環として山本は、取り敢えず亡くなった大和プロレス社長の奥さまの手によって帝日プロレス社長「マーベラス・虎嶋」の元へ道場破りに行くことになりますが、2年前引退したマーベラス・虎嶋に敗北し、帝日のマットにブラジルから来たマスクマン「アグネス仮面」として参戦することになります。

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マーベラス・虎嶋と主人公の山本

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アグネス仮面へ

 本作、とにかく1話の時点で明確に「ラスボス」として現れるマーベラス・虎嶋(どう見てもアントニオ猪木がモデル)がやたらと強いのが良いですね。

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スーツなのに強い

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ラスボス

 さて、舞台は昭和51年の日本。本作は冒頭から「二十数年前、プロレス界は今ほどビジネスライクではありませんでした。レスラーもお客も今よりずっといい加減でテキトーで大雑把で大らかで、そして誰もが真剣でした。」というモノローグから始まります。

 思い返して見ると、小学生の頃、私の好きだった番組「どうぶつ奇想天外!」には地元地獄にある高崎山なんかや、有名人が飼っているワンちゃんと一緒に出演したりしてまして、そう言えば獣神サンダー・ライガーも普通にマスクを脱いでワンちゃんと一緒に出演してたな…。とか思い出します。おおらかな時代だなぁ。

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獣神サンダー・ライガー。

YouTubeチャンネルの昔話がコンプラが皆無の時代の話で面白い。

 そんなわけで仇敵のプロレス団体にも関わらず、マスクマンとして参戦し、ついでに「道場破り対策本部係長」となったアグネス仮面は「大和プロレスの看板」を取り戻すため今日もプロレスに励みます。いきなり道場破りにやって来た男が強そうだから取り敢えず管理職、おおらかな時代ですなぁ。

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名刺もある。

 ただ、参戦レスラーとして順風満帆かと言えばそう言うわけでもなく、道場破りした当日から帝日プロレス最強の男、トップベビーフェイスのロイヤル金村に「大和の残党が居るなら潰さねば沽券に関わる」と即疑われたりしてるので意外と気は抜けません。

道場破りに来た空手家の目を潰すベビーフェイス

ロイヤル金村。おおらかな時代ですなぁ。

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疑われるのが早い

 そして本作の魅力は、大らかさではなくてやはりその真剣さでしょう。主人公のアグネス仮面は大和が潰れた事も知らずひたすら海外で修行を積んできた男で、そのひたむきな強さは帝日のマットでも遺憾無く発揮されています。

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不憫ではある。

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強いぞアグネス仮面

 アグネス仮面は、大和の復活のため誰よりも真剣にプロレスに打ち込んでおり、その意志の強さが本当にカッコいいんですよ。特に私が好きなのはマーベラス・虎嶋との戦いです。ラスボスたるマーベラス・虎嶋とは1巻の冒頭から最終巻に至るまで何度も主人公アグネス仮面の壁として立ち塞がってきます。そのたびに圧倒的な強さによって打ちのめされるアグネス仮面ですが、臆することなく立ち向かう様が本当にカッコいいんです。普通ボロカスにやられたら躊躇が出てくると思うんですが。

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大好きなシーン。

この啖呵を内心で言えるの強い。

あと何かベガみたいになってる虎嶋。

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カッコいいんですよアグネス仮面

 あとはマスクマンと言えば兄弟、ミル・マスカラスにドスカラスがいた様にアグネス仮面にも弟マチルダ仮面がいます。

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あんこ型

 マチルダ仮面(町田清)は力士上がりのレスラーで、急きょマスクマンブラザースとしてリングに上がることになります。根性も無ければ身体も丸いマチルダは初試合開始から約3分、ヘッドロックでギブアップを決めます。そんなマチルダをアグネスは鍛えなおし、タッグパートナーとしてリングで活躍したり、アイドルの名前を叫んだり、兄弟喧嘩マッチをやらされたりします。

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 初試合

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鍛えなおし

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鍛え直し後

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天地真理コール

 マチルダ関係は結構熱いシーンが多いのに何か憎めないアホキャラみたいな扱いですね。私は好きです。あとマチルダ仮面は何故かやたらと橋本真也に似ている。

橋本真也

 アグネス仮面は元大和の残党、謎の黒人空手家等並み居る強敵を討ち果たし、無事に大和プロレスを復興できるのか?彼の活躍を是非その目で確かめて見てください!

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元大和の食わせ物達

 それはそれとして、全編通してそれこそ大らかな雰囲気が漂っていて、ヒラマツミノルさんのギャグセンスが炸裂しているので是非食わず嫌いせず手に取って見てください。

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in神社

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大らか?

 そうすればきっと貴方のピンチにもアメリカプロレス界のスーパースターも駆けつけてくれるはず!

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夢か現か正気か将棋は〜奥泉光さんの「死神の棋譜」

 最近物理本をよく読んでいます。メールの文面をAIに考えさせる後輩とかを見ますと「ず、ずるい!」と言う言葉を飲み込んで「心が籠もっていないアウトプットで取引先を動かせるのかね。」としたり顔で老害仕草をしてみたい今日この頃ですが、普通にAIに出させたメールの文面おかしいのとそこのチューニングするくらいなら自分で文例検索して打ち込んだほうが早いと言うのが現実で淋しいところです。全部うまい具合にやってくれよAI。

 さて、と言うわけで新しい本との出会いはまだまだもっぱら物理書店ですね。Kindleストアとか売れてる本と漫画の続編しか教えてくれないし。そんな中、最近「これぞ良い出会い」と思ったミステリー小説奥泉光さんの「死神の棋譜」を紹介します。

 

単刊、完結済み 

 本書の大まかなあらすじを説明しますと、いや、新潮文庫のあらすじが秀逸過ぎるのでまずは引用させていただきましょう。

究極の将棋ミステリが放つ、命懸けの勝負と謎、
そして衝撃のどんでん返し!
「魔の図式」が22年の時を経て、いま蘇る――。

第69期名人戦の最中、詰将棋の矢文が見つかった。その「不詰めの図式」を将棋会館に持ち込んだ元奨励会員の夏尾は消息を絶つ。同業者の天谷から22年前の失踪事件との奇妙な符合を告げられた将棋ライターの〈私〉は、かつての天谷のように謎を追い始めるが――。幻の「棋道会」、北海道の廃坑、地下神殿での因縁の対局。将棋に魅入られた者の渇望と、息もつかせぬ展開が交錯する傑作ミステリ!

(公式サイトのあらすじより引用)

 いや、内容に入る前に良いですよね「幻の『棋道会』」「北海道の廃坑」「地下神殿での因縁の対局」もうこの時点で最高なのが判りますよね?分からない?ガキは帰ってミルメークでも作ってな。

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ご存知ミルメーク

 どうですか、そこはかとなく81のマス目にダイブする男たちの姿が浮かんできたでしょう。

 さて、じゃあ内容は実際にどうかと言いますと、普通にハードな探偵小説と言った趣の作品です。というか『不詰の図式』『幻の棋道会』とかあらすじで言っているのに冒頭から「名人は羽生善治三冠、これに七勝二敗でA級順位戦を抜けた森内俊之九段が挑戦するシリーズは…。」と始まり、ちょっと、いや結構度肝を抜かれた。棋道会とか出てくる話を実在の人物と同じストーリーラインで語るの?とちょっと目眩がした。おいおい、リアル路線で行くのかい?そっちは茨の道だぜ…。

 リアル路線だと森村誠一が浮かぶんだもんよ。

とおせっかいに思ったもんですが、思った以上に淡々と話は進んでいく。謎を解くというよりは着実に聞き込みを行い、調査を進めて外堀を埋めていく主人公の〈私〉を見ていると、「おいおい森村誠一じゃないんだぞ、棋道会は、北海道の廃坑はどうした!」と思わないでも無かったですが、またれよ。この本、かなりトリッキーなあらすじを見て某ハチワンダイバーを思い浮かべる人しかいないと思うが、全然そんなことはない。どちらかと言うと「黒祠の島」や「残穢」が近い。不思議だけど本当なんだ。

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ハチワンダイバーより。

「死神の棋譜」にも将棋教団みたいなの出てくる。

 「黒祠の島」と言えば探偵の主人公が疾走した知り合いの探偵を探しにある島に降り立って、調査をしながら随所で「釈然としない…。」と言っている作品ですが、本作もだいぶその流れを組んでいると思います。

 

 単巻、完結済み

単純に誰も解けない詰将棋や、やたら強豪が集う地方の将棋道場が関の山の現実に、「どうあっても詰まない詰将棋」「宗教団体が立ち上げた真剣士の集団」そんなもの現実味がありますか?まぁ設定には無いんですな現実味。その現実味が無い異物みたいな設定に実在の棋士が登場するリアルな雰囲気を丁寧に寄せていくんですよ、さすが棋士達…。段々と北海道の廃坑に棋道会、あるかもな…と読んでいて正気を失える感じが、社会派ミステリーみたいな顔して幻想小説みたいな雰囲気を醸し出していて良いですね。

 また、世界観としては将棋会館やタイトル戦が出てきますが、本作のメインどころは(元)奨励会員達です。ハチワンダイバーよろしく、30手前までずっと将棋に打ち込み、プロになりたくてもプロになれなかった男たちの執念が随所に渦巻いています。プロ入りを賭けた一戦に負けた日の話が、生きるため再び動き始めたときの話が、〈私〉を始めとするキャラクターにかなり黒い影を落としています。やっぱりいい歳になってくると挫折した経験の3つや4つあるわけじゃないですか。ジャンルは違えど元奨励会員にはやたらと感情移入できますね。あと〈私〉にも名前があるんですが、是非、自分を主人公と思ってノベルゲームみたいに追体験してほしい。

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元奨励会員が追放された勝負の世界

 時折将棋に負けたときのことがフラッシュバックして、何なら調査中にも結構な白昼夢を見る〈私〉のせいで現実感が徐々に失われていくのも良い。あまりにも白昼夢を見るからクスリやってるか疑ったもんね。

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アニメ「ヤニねこ」よりヤクねこ

 後は、おっさんが将棋を巡って動いているだけじゃつまらないってわけではないんですが、大盤解説でも横に華があってほしいと思うおっさんは多いはずです。口に出せばしょっぴかれそうなご時世ですが。

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ハチワンダイバーより。

 本作にも将棋マニアなら誰しも憧れる切れ長の瞳の女流二段が調査の助手として随行してくれます。この「将棋マニアなら誰もが憧れる美人」と言うのが手が届きそうで届かないアイドルみがあって嬉しいですね。この女流二段玖村麻里奈と〈私〉の恋愛模様についても注目です。〈私〉は彼女にアプローチするたびに〈寄せるには手駒が足りない〉とか抜かすので、野球用語でセクハラするおっさんみたいでいただけないですが、そこはもう将棋好きなおっさんとして感情移入していきましょう。

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絶頂パワハラプロ野球より。

 最近昔あった悲しいことを思い出して夢の中でうなされても、それが本当にあったことだっけ?まぁ良いか。となってきたおっさん方に是非オススメしたい1冊です。

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理解の及ばない世界を覗いてみよう〜パピヨン本田さんの「常識破りの天才たちが作った美術道」「コンセプチャル・ガール」

 世の中で誰しも体験するのに教えて貰えないことと言えば色々あります。「高速道路のJCTの上手な乗り換え」「転居にあたっての申請」「確定申告や税控除の申告」と色々あるのに、学校では教えて貰えません。「大切なものは目には見えない。」と星の王子さまも言ってましたし、「大人は質問に答えたりしない」と利根川あたりも言っていた気がします。

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あんまり質問に答えてくれなかった利根川さん。

 さて、そんな習ってこなかったものの代表格と言えば「現代美術」では無いでしょうか。音楽や美術の授業は高校以上は選択制だった気がしますし、表現技法について習っても「音楽史」「美術史」については不思議と習ってこなかった気がします。日本史や世界史の文化の項目で一部だけあったかな?

 ただでさえ音楽や美術の良し悪しなんて習ってこなかったのに、絵の具をひたすら塗りつけた作品やトマト缶みたいな作品を見せられると「これは…?何?」となってしまいます。

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1つ600万円くらいのトマト缶

 本日は、そんな習ってこなかった美術のなかでも更によく分からない「現代美術」を扱った書籍&漫画、パピヨン本田さんの「常識破りの天才たちが作った美術道」「コンセプチャル・ガール」を紹介します。

「常識破りの天才たちが作った美術道」は単巻

「コンセプチャル・ガール」は続巻

 「常識破りの天才たちが作った美術道」はゴッホやセザンヌなどのえらい過去の美術作品の解説を行っているのではなく、ここ50年くらいの「現代美術」について解説した書籍です。実際にどんな作者・作品から解説が始まるかと言いますとまぁ便器をひっくり返しただけの作品とかですね…。

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マルセル・デュシャンさん

 正直、小便器をひっくり返しただけで芸術と言われてもこちらも「?」となります。個人事務所に箔をつけようと買い集めるなら絶対に「現代美術」は止めておこうと思わせてくれる勢いがあります。

 ただ、ここに「工業化が進む中で人の手でものを作る意味とは?」「ものを作るだけが芸術ではなく、作家が何を考えたのかを示す作品を作る重要性」などの「解説者による補助線」が入ると一気に便器も芸術として楽しめる気が、気がして、気がしてきますね???

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全部が全部分かるかというと、解説を聴いたうえで分からないものもある。

 冗談か本気かはさておき、どうしても「現代美術」の世界では考えたり、対話したりと「観るだけでは」楽しめない要素も多いようです。そんな現代美術のなかでも特に「分かりづらい」ものをジャンルごとに分類して紹介してくれている本ですので、シンプルにためになるとともに日頃見かける少し分からない芸術に意味を見出だせる気がします。いや、美術にあんまり興味のない私が見ても名前を知っている大御所が多いし、やっぱり現代美術自体が全部分かりづらいのか…?

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本当に凄い人達

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対話自体を芸術に見立てる姿勢、好き

 さて、そんな現代美術、コンセプチュアル・アートを扱った漫画が同作者の「コンセプチャル・ガール」です。女子高生をバイクに乗せたりキャンプさせたり麻雀させたりと、取り敢えず何でも女子高生にやらせれば良いやというジャンルも来るところまで来たな感がありますね…。

 ただ、読めば読むほど本作、「コンセプチャル・ガール」は味がしてくる作品です。美術部のある私立音寺巻(ねじまき)高校の2年生で主人公の和田まひろは取り巻きの華塚花と一緒に現代美術部を立ち上げ、校長に「無」を売ったりと問題行動が多く異端の存在として高校に君臨しています。

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最悪の冒頭

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生徒と向き合う純粋な教師

 あまりにジャンル的に素人なので口を出すのもおこがましいのですが、現代美術という理解しづらいジャンルの芸術がどう芸術足り得るのかというとそこはやはり「他人に影響を与えたか」では無いでしょうか。

 そういう意味では、和田まひろの活動は周囲の人間に影響を与え、呼び寄せ、作品を通して対話を強いています。まぁただ滑っているだけにしか見えないシーンもありますが、というかそれが大半に見えますが。

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ちゃんとしたコンセプトがあっても「?」となる作品。

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これくらいの解像度でも楽しめるよ。

 純粋に分からないながらも熱意のある作品が、「これはどういう意図ですか?」と対話・会話を呼び、コミュニケーションへと繋がっていく様が、双方向性という感じがして読んでいてとても楽しいです。

 私が好きな回は、軽音楽部とオケ部の争いを収めるために行った「オセロックフェスティバル」の回です。新入生歓迎会でどちらが体育館を使うかという争いを「どちらの音楽が優れているか?」と実際に競わせつつ、両陣営に対話を促すという、リレーショナルアート?ってこんな素敵なものなんだなと思わせてくれる回でした。

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オセロックフェスティバルの様子

 また、別の面としては、対話や人間関係を重視しつつも、コンセプチュアルアートが芸術としてどうあるべきなのか?たとえばそのものの価値や評価にも踏み込んでいるあたりが良いと思いました。

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アートを通した対話

 作中でも和田まひろが個展を開く際に、美術の大御所は「良い展示」と褒め称えますが、同年代の作家には「今さらそんな場所で展示しても次につながらない。」と酷評します。

 コンセプチュアルアートの世界にも明確に優劣があり「誰かの記憶に残りたい」ではなく、「てっぺんを目指したい」と考える人も勿論居るようです。自己満足で良い人、他者の評価が欲しい人、色々いる訳ですが、和田まひろは明確に後者であることが示されており、今後ますます暴れてくれそうな感じがしてとても良いです。

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若者なんて中指立ててなんぼだよ!

 教養として現代美術に触れたい方、なんで便器をひっくり返して芸術になるのかアハ体験したい方、反骨精神を忘れた方にオススメです!オタクの好きなタイトル回収もあるよ!

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タイトル回収

 是非、GWの頭に本作を読んで、ちょっと美術にかぶれたまま美術館に突撃してみてください。きっと少しだけ有意義な休暇になる筈です。

 

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こいつを読んで一緒に、推しを◯そうぜ!〜タカノンノさんの「推し殺す」

 創作が好きで、創作物を漁るのも大好きです。何やかんや迷惑ばかりを掛けてしまった恩師も「人から本を勧められたり借りたりしたら、すぐにその本を買って読め。」と私にとって得しかない教えを授けてくれました。

 創作が好きと言ってももっぱら文章の方で、なんなら文章についてもこの書籍を紹介するブログと登山記録何かを紹介するnoteくらいしかやっていません。人様に小説なんぞをお出しするのは恥ずかしいという気持ちと、そもそも仕事が忙しくてそこまで時間が割けない…わけではなく、疲労を押してまで何かを創作しようという強い意欲は持ち合わせていないなと思う日々です。

 最近だと野﨑まどさんの「小説」「小説は書かなければならないのか、読むだけではダメなのか。」というテーマに踏み込んでいてほぼ読み専の私としてはなんか良いなと思いました。

 「小説」の様に、何か創作に対するポジティブなメッセージというのが昔から好きです。山田しいたさんの「文藝乙女ハッカソン」や「ITおじさん」なんかで学生の青春を創作に当てたり激務の合間にも寸暇を惜しんで執筆活動をしたりとする描写なんか良いなって思いますね。多分、あわよくば作ってみたいという思いと自分が好きな小説や漫画がドンドン生産されていく様に興奮を覚えているのかもしれません。きっとビール工場の見学を楽しむ中年みたいな気持ちですね。

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山田しいた:ITおじさん3巻より。

忙しい現代人の創作に対する応援歌みたい。

 

 さて、本日紹介する漫画はそんな創作に対するポジティブなメッセージで溢れる作品、タカノンノさんの「推し殺す」です。

 全4巻(完結済)

 本作はかつて高校生マンガ家「大森卓」としてデビューしながら、現在はその自身の過去に苦しむ小松卓くんが大学入学とともにまた漫画と向き合う物語です。

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主人公小松くん。

 入学後に行われたサークルオリエンテーションで様々なサークルから勧誘を受ける中、小松くんが出会ったのは、自身のかつての著作を手に「プロデビューして大森卓と会って、殺す。」と宣う同級生、三秋縁さんでした。

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殺害宣言

 図らずも漫研に入ってしまった小松くんは、未熟な三秋さんを導き、自らの漫画への執着を断ち切って貰おうとする、と言うのが本作のあらすじです。

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未練

 本作は、漫画を主題に置いた「バディもの」です。漫画家デビューに伴う様々なトラブルから漫画が描けなくなった小松くんと、未熟ながらエネルギーに満ちた三秋さん、それぞれ対極ながら対等な2人は相互に良い影響を与えながら創作へ突き進んで行きます。

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ダメだし。

 落ち着きを持って生きたいと思いながらも、大学時代に持ち得た謎のエネルギーや自己陶酔、万能感にも等しく憧れを持っている紳士淑女の皆様は分かって頂けると思うのですが、やっぱり若さは良い。大体、「俺、もう色々諦めてるから。」みたいなダウナー大学生って日々働くおじさんおばさんの5倍くらいエネルギーがあるじゃないですか。小松くんも絶賛そのタイプで、「漫画なんて…。」とひねた態度を取っていますが、その抑うつされたエネルギーたるや半端がないものがあります。ともすれば闇堕ち(もうしてる?)しそうな陰のエネルギーを一顧だにせず受け入れ、爆発させる三秋さんという2人の組み合わせ、化学反応が、こう、中年にはかなり眩しいです。

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中年のハートに点火しちゃう。

 少し前の創作を題材にした漫画だと、連載を巡ったバトルが主題となっているものをよく見かけていた気がします。

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日本橋ヨヲコ、G戦場ヘヴンズドア2巻より。

 「推し殺す」もその要素が無い訳では無いのですが、どちらかと言うとSNSでセルフプロデュースしていく必要性や作品の良し悪しとは別の所で感想が炎上していく様が描かれていたりと、作者VS作者というよりは作者VS読者の構図のほうが大きい様に感じます。小松くん自身、著作が世間で騒がれた結果として漫画が描けなくなっています。そんな中、強く「創作をしたい!」「自分の著作を人に読んでもらいたい!」と真っすぐな三秋さんの魅力が光ります。

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エネルギッシュかつ臆さない所がよい。

 魅力と言えば、本作品の三秋さんは凄く可愛らしいです。何が良いかと申しますと時折出てくる不細工な顔ですね。可愛らしさと言うものは、美醜や性別とは関係ないと思います。可愛いおっさんも居れば可愛くない美女もいます。そんな中、可愛らしい見た目をしながらコミカルに(可愛くない顔を)している三秋さんは魅力的です。澄ました顔しているより、死んだ変顔を見せてくれる方がそこに人間味を見出せて良い気がします。

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急に何?

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気持ち悪い系ヒロイン

 書きながら自分がそう言うフェチなだけな気もしますが、「仲良さそうな人にしかしなそうな顔を向けてくれる」と惚れそうになるというのは万国共通では無いでしょうか。

 総じて、4巻という巻数の中で「描き始めること」「人に見せること」「インプットをすること」「自分が好きなものが何か明らかにすること」「完成させること」「描ける環境を用意すること」「目標やライバルを持つこと」という創作に必要な一連の作業がたっぷりと詰まっていて、創作をしている人は思わず感情移入をしてしまいますし、創作をしたい人には「創作ってこんなに良いものなんだ」という創作へのカンフル剤になる素敵な作品だと思います。

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インプットの段階で出てきたカスのアベンジャーズ。

実際、楽しげに協力してくれるとても素敵な人達で自分の周りにもいて欲しかった。

 創作をしている人、創作をしたい人、創作物を見る専で楽しみたい人と若さを失い疲れ切ってる中年と全ての人に捧げる創作賛歌みたいな素敵な作品です。

 是非、GWの頭に読んで、隠された創作意欲を爆発させて、推しを一緒に◯しましょう!大好きな創作物が推しに届き、あわよくば推しを倒せれば誰だって存在証明になるはずです。

 

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平成の余韻が残るナードなロボと共に〜マーダーボット・ダイアリー

 ライトノベルのテンプレートとして好きなのは作中でB〜C級くらいの能力の主人公が経験や機転で何とかする話です。普段は現実を知ってくたびれていても有事には意外と熱くなるタイプのキャラクター、やっぱり良いですよね。ぱっと思いつくのは海外の児童書のバーティミアス、国内だと「狼と香辛料」あたりの主人公がthe 中級って感じで好きです。

優秀な魔法使いがB級の実力の悪魔「ジン」 を呼び出す話

 何故か廓言葉の狼ヒロインと旅をする行商人の話。主人公は商人としてそこそこ優秀だけど明確に上位な相手に敵わない感じが好き。

 ただ、「やれやれ…。」感が強すぎたり、逆にオラオラしてたりするとちょっと興が削がれてしまいます。海外小説だと「なんかナードに描かれてるけどこいつ中々マッチョだな…。」とか思っちゃうとノイズになります。感情移入できるくらいの陰キャ具合が良いじゃないですか。俺たちはできれば皆スコールになりたい!

note.com

大好きな記事。スコール、やっぱり憧れるよ。

 そんなわけで本日は、不思議と感情移入しちゃうちょいナードなサイボーグの話「マーダーボット・ダイアリー」を紹介します。

全5巻

 本作の主人公は警備会社に雇われている警備ユニットであるマーダーボット(自称)です。自らに命令を下す統制システムをハッキングし、空き時間はもっぱらこっそりダウンロードした連続ドラマを観るという、もう聴いただけでナードなサイボーグです。

 ただ、そんなナードなサイボーグですが、システムをハッキングしているので「従うと顧客が死んでしまう命令」をサラッとスルーして顧客を救ったりとある程度の有能さを見せたり、基本は警備ユニットとして身を挺して顧客を庇ったりと中々に格好良い。そんな彼が、ある警備事件をきっかけに企業の闇渦巻く陰謀に巻き込まれていくのが本作のあらすじです。

 それはそれとして、この主人公、基本はアーマーで身体を覆って人前に顔を見せないように人との関わりを積極的に回避します。この物語の世界では警備ユニットは「意志を持たない殺人サイボーグ」扱いされているので「殺人サイボーグ扱いされるの超気まずい…。」と自分の殻に引きこもりがちです。超ナードです。

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僕のヒーローアカデミアより。

ナードな主人公。

 ちなみに、本作品でのマーダーボットの一人称は「弊機」で、これだけで翻訳者のセンスのずば抜けていることが伝わってきます。私も今日から「弊機」を一人称にしたいもん。

 警備任務を通して、顧客がうっかり知ってしまった秘密をきっかけにどんどんと事件に巻き込まれていく中で、かなり(ネガティブな方向に)感情を発露するマーダーボットは、「やれやれ系主人公」のハイエンドモデル感があって良いですね。そんなマーダーボットが事件の中で人や他の人工知能達と接触を繰り返すなかで自らの中に芽生えていく感情、その感情に振り回される姿が「そうだよ!そのテンプレでいいんだよ!」とお約束な感じがして最高です。

うたかたダイアログより。

こういうので良いんだよ。

 そしてマーダーボットはシステムをハッキングした警備ユニットとして、作中でB+くらいの実力を誇っていますが、やはり純戦闘用の戦闘ユニットや上位モデルの戦闘警備ユニットには敵わないという絶妙な塩梅が「工夫で戦うしかない」という「平成のお約束」に則っていて多分大多数のおっさんに非常に刺さります。「チート」とか言ってる人にはたどり着けない領域ですよこいつぁ。雑魚い念能力でどう戦うか考えてきた平成世代しか着いてこれない筈です。

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HUNTER×HUNTERよりビノールト。

普通に戦うしかない念能力。

 また、作中で序盤の事件が解決した後にマーダーボットは人知れず姿を消します。これは自由への船出…。とか思っていたら、思った以上に熱い理由からの失踪でした。内心では「ここに私の仕事はない…。」みたいなこと言ってましたが、姿を消した理由が明るみになってからは「こいつ…!ほとんどウォーズマンじゃねぇか!」とナードが一転悲しみのファイティング・コンピューターに切り替わります。この辺、見事な引きでしたね…。

www.uta-net.com

 

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キン肉マンより、ウォーズマン。

「この世は勝たなければやられる。

だから、勝つために俺は闘う。

だが、言っておくが、

俺の体の中にも赤い血が流れているんだぜ!」

 なんか思わずナードなサイボーグに感情移入していたらいつの間にか超人が生まれていた…。そんな気持ちを味わいたい方は是非、「マーダーボット・ダイアリー」シリーズおすすめです!

 感情が芽生えたサイボーグの活躍が見たい方は是非「マーダーボット・ダイアリー」を読みましょう!そして読まないというのであれば、この鉄の爪、ベアークローが胸に突き刺さるのを覚悟しておくが良い!

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何気ない日常も誰かの救いになるのかも〜問松居間さんの「しかし火事獅子歌詞可視化」

 単巻のマンガが好きです。それがハッピーエンドでもバッドエンドでも丁度切りよく1冊で終わったほうが余韻が感じられると言いますか、キャラクターのその後に思いを馳せやすくなると言いましょうか。ぱっと思いつくところだと「ブラッドハーレーの馬車」「黒博物館〜スプリンガルド」「我らコンタクティ」「環状白馬線車掌の英さん」あたりですかね。ジャンルもごちゃまぜな感じですね。

 この中だと、最近、ネガティブと言いますかここ数年自分に自信が持てなくなってきているので、疲れた中年達への人間讃歌っぽい「我らコンタクティ」が好きですね。とぼけた感じながら疲労漂う日常から夢を追いかけ始める姿はなんかグッと来るものがあります。まぁ黒博物館みたいに「ここから先は敬虔で善良なるもの以外立ち入り禁止だ…。」ってやるのも憧れはしますが。

 (全1巻)  

 (全1巻) 

 というわけで本日は、私のように思わずネガティブになる、自信が持てない、歩くチブみたいな方におすすめしたい作品、問松居間さんの「しかし火事獅子歌詞可視化」を紹介致します。

 

(全1巻)

 「しかし火事獅子歌詞可視化」はそこそこの人気を誇りながらも3年前に引退したVtuber「火事ライオン」を巡る群像劇です。

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火事から焼け出されたようなガワのライオンVtuber

 火事ライオンとして活動していた千葉さんは、結婚詐欺にあったことからVtuberとしての活動を無期限中止し、工場でネジを作る仕事に従事していました。火事ライオンの曲は、曲内で歌われている場所・シチュエーションに沿った想いでいると曲が可視化するというソングダイブなる現象と、ちょっととぼけた感じの声ながらも、リスナーに感情移入をさせる歌詞から、引退から3年たった作中冒頭でも多くのファンを魅了しています。

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Vtuber活動期、結婚詐欺に合う寸前

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謎の現象ソングダイブと火事ライオンの中身千葉さん

 本作は、この火事ライオンのファンや関係者を中心とした群像劇です。登場人物達は、誰しも持つようなちょっとした悩みを抱えており、日々自分の悩みと向き合いながらどこにでもあるような平凡な日常を過ごしています。そんな日常が様々な出会いや火事ライオンの曲によって好転してくというのが本作の大筋です。

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祖母に感謝を伝えられなくて悩む男子高校生

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かつて息子をバイク事故で亡くした魚屋のおじいさん

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幸せになりたいと何かを見失っていた女子大生加治さん

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「おっかさん」と呼ばれ年相応の女子扱いされないことに悩む女子高生石川さん

 この漫画はかなり登場人物達の「自己嫌悪」と向き合っている物語である気がします。現代に生きていて全く悩みなんて無いなんてことは無い筈です。それが外的要因というのももちろんあるでしょうが、ダメな自分を変えたいというのも普遍的な悩みでしょう。 

 そんな中で、やっぱり他人の辛さに気づくのは中々難しい気がします。作中では老若男女に陽キャ陰キャを問わず、皆の悩みを違うそれぞれの目線で丁寧に描いており、まず、そんな少しネガティブな描写を通して、自分だけが悩んでいる訳では無いんだなと思うことができます。

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火事ライオンの中身、千葉さん。

気持ちわかる。私も常にこんな感じ。

 そんな悩みの渦中でも日常は続いていき、止まることはできないといった中で、それぞれが自らと向き合いつつも、他者を応援し、それが誰かの救いとなっていくというのは凄くポジティブなメッセージに感じます。

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恋を応援するために石鹸を切り分ける加治さん

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虐めにあった孫を応援するためにマグロを解体するおじいさん

 特に良いなと思っているのが、火事ライオンの中身千葉さん周りの話です。火事ライオンの曲は、作中で一貫して誰かを後押しするポジティブな存在として描かれています。一方で、火事ライオン自身は創作を中止していることからも分かる通り、自身は創作が何にもならなかった「失敗」の象徴だと思っています。

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楽しくてやってた筈の創作が「失敗」になるのは辛い。

 そんな火事ライオン自身も、火事ライオンとしてその曲が、そして一人の地域大人として誰かを救うことで自らも救われていくという循環が、現代では増えてきた配信者や表現者などの創作者に対するポジティブなメッセージの様に感じました。

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人のためになるのが自分のためになる瞬間、生きていてよくある。

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対比が良い。

 蛇足なお話になりますが、ソングダイブ周りの話を。「ソングダイブは作劇の関係上本当に必要なのか?というのは少し感じました。ファンが日々聖地巡礼を行うための理由付けの様にも感じますし、本筋としては必然性のない描写に思えるかもしれません。」とか言う輩が多分出てくる。うるせぇ。それが良いんですよ。本作の火事ライオンの曲は殆どがポジティブな曲であり、総じて誰かへのエールとしてでっかい見開きで描かれます。俺達は見開きが好きだ。ポジティブなメッセージが好きだ。それで良いやん。と思わせてくれます。見開きがなくなったらザ・キンクスとか魅力が半減するでしょうが!

ザ・キンクス大好き。見開き無くてもきっと面白いけどサァ。

 見開きはあればあるほど良いんだからソングダイブは必要なんですよ!

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シンプルに日常+ファンタジーも見た目が良い。

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 たまーにネガティブな見開きも。

 私自身も日々、小説や映画、音楽に友人と様々なコンテンツ・人に救われていると感じています。

 このブログや登山記録を付けたりしているnoteなど、正直何にもならないと自分でも思ってしまうことがありますが、そんな何気ない、しょうもない日常や趣味も誰かに影響を与えられるんじゃないかと思えてこちらの漫画本当に好きです。

 自分に自信が持てない、無価値だと感じた際にぜひ読んで頂きたい作品です。

 それはそうと上記の通り私も自己肯定感に飢えておりますので読書のバナー↓のクリックや、なんか星型の良いね的なボタンのクリックを頂けたら幸甚です。