本日6/24は全世界的にUFOの日です。何故なら1947年に実業家のケネス・アーノルド氏がレーニア山で皿型の空飛ぶ円盤(UFO)を目撃したためです。(ケネス・アーノルド事件)また、同年7月にはニューメキシコ近郊のロズウェルにて空飛ぶ円盤が墜落したとアメリカ軍が発表し、後に観測気球だったと訂正しています。(ロズウェル事件)
私のようなスペースピープルには常識なんですが、夏はやっぱりUFOの観測にぴったりな季節なんですよ。ただ、昨今の怪談で怪異ではなく「ヒトコワ」が流行している様に、超常現象系もなりを潜めているのが悲しいところです。「本当は人が一番怖いんだよね…。」みたいなの求めてないんだよ。そんなん小説読まなくても働いていれば分かるんだからよ!
大抵の「ヒトコワ」より「東京都北区赤羽」のペイティさんの方が怖いんだからフィクションの中くらいUFOや妖怪とイチャイチャさせてくれよ!
さて、心がねじ曲がって捻くれているので、皆が推していると逆向きに走り出したい性分ですので今日は敢えて篠田節子さんの「ロズウェルなんか知らない」の紹介をしようと思ったんですが、「町おこしのためにUFOを利用して頑張る青年団(20代後半〜30代後半)という構図がある地方」はもう超常現象よりも少ないのではないかと思い、ちょっと別の方向でセンチメンタルな気分になったので素直にビッグウェーブに乗ります。
UFOで町おこし系小説。面白いよ。
本日紹介するのは秋山瑞人さんの不朽の名作「イリヤの空、UFOの夏」です。
(全4巻完結済み)
「イリヤの空、UFOの夏」は中学2年生の夏休みに新聞部の先輩と近所の米軍基地を監視して未確認航空機の存在を明らかにしてやると山ごもりしてついでにタヌキを餌付けしたり、なんか夜中の野球場横でユサユサ動いている車に取材と称して爆竹投げたりと今は無い青春の1ページを送る浅羽直之君(14)を巡る物語です。
そんな数値を青春に全振りした結果、宿題はおろか人間らしい生活すら放棄した夏休みを送っていた浅羽は、夏休みの締めくくりに忍び込んだ深夜のプールでタイトルにもなっている少女イリヤと出会います。浅羽は泳ぎ方も分からない、寡黙な美少女イリヤに一晩だけ泳ぎ方を教え、夏休みは終わったけど青春のおかわりはこれからや!と思ったのも束の間、社会性が無い怪しい感じのお兄さんに声をかけられ、ついでにちょっと怪しいお兄さんのお友達のメン・イン・ブラックみたいな黒服の方々に囲まれて帰宅することになります。
そんなけったいな夏休みが終わったあと、宿題を出していないことを暴力的なクラス担任河口泰蔵三十五歳独身と一緒に思い出したりしてる間にプールで出会ったイリヤは転校生として浅羽のクラスに転校して来ました。ただし、ラブコメ的な雰囲気よりは背後にメン・イン・ブラックの存在を常に感じさせて。
本作をボーイミーツガール、セカイ系の古典的名作、とか言い始めるとまぁそれで紹介が終わってしまうのですが実際その通りです。中2で接種したら多分取り返しがつかないと聞いたことがあります。
乾くるみさんの名作「イニシエーションラブ」が恋愛ごっこが恋愛に至るまでの過程を描くとすれば、本作は主人公浅羽が少年から男になるまでのイニシエーションです。映画ならスタンド・バイ・ミーか。
名作だけど「最後の1ページで!」みたいな持ち上げられ方勿体ない。
本作には少年が男になるために必要なものが全て詰まってます。新聞部、暴力、原チャリの盗み方、映画デート、文化祭、フォークダンス、大食い、死体洗い、戒厳令下の街、家出、逃避行、屋根に登って食べるカップヌードル、そして別離。
田島列島「子供はわかってあげない」より
私含め多くの人間が諦観と妥協とともに大人になっていく中、最後まで若者らしく足掻き続ける浅羽は羨ましく眩しい存在です。また、若く足掻き続ける浅羽と浅羽の目から見る登場人物達、それは東北弁の抜けない歴史教師であったり、怪しい保険医、理髪店を営む両親、浮浪者にメン・イン・ブラックな連中等、かつて浅羽だったかもしれない、見た目よりもずっと真剣に生きている大人達の対比が際立ちます。
作中の子供らから見て「本当にこいつらまともか?」と思うような社会や組織が描写されてる作品あるじゃないですか?お前らだぞNE〇V。この作品ではメン・イン・ブラックみたいな奴らがちゃんとメン・イン・ブラックしてるのが非常に良いです。まぁデートを出歯亀したり、恋人みたいな何かを見つかったりしますが…。
ただ、注意して頂きたいのは本作は7割くらいはコメディと思ってください。コメディの含有率はかなり大きいのですが、それが非日常との対比になっており、特に時たま「ヒトコワ」より「陰謀」の方が怖い!と思わせてくれるのが白眉です。アンビリーバボーとか90年代〜00年代を青春として生きてきた世代には懐かしさが勝るかもしれませんが。そんな感じで昨今凋落気味な「陰謀」なシーンを盛り上げてくれるので、ちょっとくらいしつこいコメディ描写や時代を感じさせる描写も気にせず最後まで読んで頂きたい。ちょっと温度差凄いけどサウナみたいなもんだから!
代謝が落ちた人間はランニングができずに結局サウナに頼ることになります。この世に生きる島耕作以外の青春や反抗ができない大人はラノベを読み少年が男になる瞬間に思いを馳せる事でしか青春を追体験できないのではないでしょうか?いたずらに最新作のラノベを漁って好みの作品を探すのではなく今こそ古典を、ゼロ年代の波を感じる時では無いでしょうか?
代謝と読書量の落ちてきた私みたいな三十代の方々にオススメです。
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自己肯定感が上がります。