つい先日3年ぶりくらいに、平野耕太先生の「ドリフターズ」の新刊が出ました。
何年ぶりに出ても楽しく読めるのは流石の一言ではあるのですが、その中でも特にキャラが立ち始めたスキピオが格好良い巻でした。
シンプルにスキピオかっけぇなぁと思いつつ、大軍の兵糧と考えたところで、ふと少し前に読んだナポレオンの漫画を思い出しました。
漢しかいないナポレオンのマンガ。
周りがビジネス書とか読んでいるとなんとなく跳ね返って敢えてこういう本から学ぼうとしてしまうのは私の癖ですが、結果としてかなり良い経験となりました。特に晩年のナポレオンを悩ませた兵站とついでにほぼ全ての人物が備えている男気は今後のビジネスに良い影響を及ぼしそうな気がしなくもないです。
戦力の逐次投入はダメとは素人でもよく聞く話ですが、一括で投入する規模がさすが皇帝。凄まじいです。この軍隊が3食取るとして180万食/日って考えただけでも気が遠くなりそうです。で、そしてこのあとどうなるかというとまぁ悲惨なことになっていく訳ですよ。
戦略的撤退?
悲惨な状況。
ナポレオンってなんとなく冬になったからやられた位のイメージでいましたが相手が撤退に撤退を重ねて、やっつけることができないだけでアホみたいな金が飛んでいく訳でそりゃキツイですよね。営業のためのサンプルを作りまくって接待しまくって契約に至らない…みたいな悲哀を感じますね。
しかもナポレオンの場合、冬までに終わらせられなかったので新たに飯のみでなく服まで必要になってくるという。
服どころか飯の輸送手段すら足りない。
靴、大事。
ヨーロッパの地図を塗り替えたナポレオンですら色々大変だった兵站、そんな兵站がメインとなるマンガといえばそう、速水螺旋人(はやみらせんじん)さんの「大砲とスタンプ」ですね。
大砲とスタンプ、全9巻(完結)
この漫画はソ連っぽい国、大公国の新人将校を中心とした群像劇で主に兵站に焦点を当てたものとなっています。ソ連っぽい国大公国とドイツっぽい国帝国が同盟を組んで中央アジアっぽい国共和国の一部アゲゾコを占領しており、そこの兵站軍に主人公マルチナ少尉は配属になります。
ちなみに弊社では事務や総務、技術系ってなんとなくメインを張ってる営業だのと比べると軽視されがちな感じなんですが軍隊でもやっぱりそんな感じみたいで、主人公マルチナ少尉も苦労しています。バリバリの裏方仕事をやっている私は彼女にガッツリ感情移入できます。
兵站職の扱いが雑。
軍隊だと前線で戦わない人の扱いなんてこんなものかと思いつつも、他の漫画では描かれない軍隊の事務方の仕事を丁寧に描いているのが魅力です。
ある意味激戦。
飯、弾、服、酒、はたまた金に至るまですべての物が仕事になっているため戦記物というよりさほとんどお仕事マンガの様相なのですが、そんなお仕事の様子も軍事やソ連に対してかなり造詣が深い速水螺旋人先生が描くと、こんなワンシーンが本当に歴史の何処かにあったのかも、と思わせるリアリティが素晴らしく読んでいてワクワクします。
更に物語が進むに連れ、徐々に主人公の同僚達も掘り下げられていきます。SF好きの事なかれ主義のキリール大尉や歴戦の猛者、不死身のボイコ曹長とスラム生まれのアーネスカ兵長、占領地の解放のために活動するゲリラ、「監督」、暗躍する憲兵カライブラヒム中尉など魅力的なキャラクターが多数いるのですが、それらの人物が掘り下げられつつも徐々に終幕に向かっていく間が観劇をしているようで素晴らしいです。
中隊の先任キリール大尉
ゲリラの「監督」
大公国と共和国の間で暗躍するカライブラヒム中尉
基本的には魅力的なキャラクター達のドタバタお仕事コメディではあるのですが、時折、「そうだ、こいつら戦争してたんだった。」と思わせる、息を呑むと言いますか、水を打ったように静まり返ると言いますか、そういった緩急が素晴らしい作品となっています。主役だったマルチナだけでなく、兵站軍がメインとなるラストの展開は日頃報われない裏方業務に就いている方におすすめなので、是非数巻で終わらず全て読み通して頂きたいです。
どうせすぐ忘れるビジネス書を読むより、漢になりたい方はナポレオンを、そして裏方としての魂を燃やしたい方、「大砲とスタンプ」おすすめです。