読んだら寝る

好きな作家、本、マンガについて紹介

ゆる平安、ゆる青春、ちょっとダーク。D・キッサンさん

 平安時代はお好きですか?平安時代というとゆったりと日本の文化が花開き徐々に平家と源氏の戦乱に向かうという中々にドラマチックな時代です。

 ただ、今から1200年近く前なのでイメージが湧きづらい時代でもあります。源氏物語枕草子十二単くらいがなんとなく浮かぶくらいでしょうか?私は昔親に覚えさせられたので、百人一首のイメージが強いです。私の好きな歌は壬生忠見(みぶのただみ)の「こひすてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひ初めしか」という歌で、この歌は「恋をしているという私の噂がたっている、誰にも打ち明けずに想い始めたばかりなのに」という意味になります。この歌は「忍ぶ恋」をテーマに歌合せとして対決し、負けた結果、壬生忠見は出世の機会を絶たれたやら怒りと悲しみのあまり憤死したとか散々な逸話が残っています。流石に死んだというのは盛られてるみたいですが、そういった噂が立つというのは昔も今も変わらないなと思わせてくれます。他にも平安時代の話だと源氏物語の雨夜の品定めや在原業平がやばめの雰囲気の女性をナンパした話やら好きな話が沢山あるので平安時代が大好きです。最近は小説や漫画でも意外と題材となっていたりして中々楽しませてもらっています。

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歌合、負けた方と勝った方。勝った、忍れど〜の歌の方が現代でも有名かも。

 今回はそんな平安時代をゆるく描く漫画家D・キッサンさんについて紹介したいと思います。

 D・キッサンさんの代表作といえば、平安時代の男女の奇妙な縁を取り扱った「千歳ヲチコチ」になります。

この千歳ヲチコチは上達部(かんだちめ、お偉いさん)の息子である亨の元に一風変わった手紙が届くところから始まります。父と同じように貴族としての道を歩むことに漠然とした不安を感じていた亨は一風変わった自由な手紙に心が惹かれ返歌をします。それが手紙の差出人である地方貴族の娘チコの元に届き、ふたりは互いを誰かも知らぬまま手紙の差出人に思いを馳せることになる、というお話です。


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変な手紙。

 ふたりはそれぞれの素性、在所や更には性別すら曖昧なまま、手紙の相手が気にかかり、返事を考える日々が続きます。そしてふたりは、時に奇妙な縁で返事が届いたり、すれ違ったりすることになります。

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仕方ないとはいえ、こういうことするからややこしくなるんだぞ。

 
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返歌をもらったチコと乳母。

 直接対面することのないやり取りというのは時代を超えた普遍的な物語ではありますが、そのメインストーリーを彩るのはゆるーい雰囲気とざっくばらんな現代語にコメディ要素です。

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宴会での唐突なビジネスマナー講習

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忙しそう。

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合間にちょっと考えさせられるシーンも。

コメディ的な展開や現代語はあくまでスパイス、という訳ではなくどちらかというと享とチコの手紙を巡る本筋よりも脇道の話の方が多数を占めています。ほんわかしつつクスりと笑わせてくれる脇道を通して平安時代の雰囲気を体感している間にゆっくり、本当にゆっくりと本筋が進んでいく様はスマホやネットの無い時代の時間の流れを表しているようで素敵です。と言いつつ連載中は中々進まない本筋にちょっとやきもきしていたのですがもう完結済みですので今から読む方は幸せですよ!

 また、最新作では紫式部源氏物語を書くまでを描いた神作家・紫式部のありえない日々が連載中です。

既刊1巻。

 源氏物語を同人と表現し、ニートしていたいのにお家の事情で出仕することになる紫式部を描いた作品。現実の人物なのにこう聞くとある意味昨今の女性向けなろう小説の流れみたいですね。


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気持ちはわかる。

 

 紫式部と同様に有名なのは清少納言ですが、実は清少納言紫式部は直接の面識が無いんです。紫式部は自らが出仕する以前に宮仕えし、存在感を発揮していた清少納言を認めつつ、自らも源氏物語をして使えた主君の影響力を高めようとするが、これが中々難しく…といったストーリーですね。

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そもそも周りの宮女とソリが合わない。

 

紫式部源氏物語をどのように完成し、宮仕えを続けるのか今後が気になるところです。紫式部の奮闘や当時の実在の話も面白いのですが、大学受験なんかで古文の雰囲気を掴むのに丁度こんな漫画が欲しかったですね。

 

 平安時代以外の著作は、デビュー作「共鳴せよ!私立轟高校図書委員会」があります。

通称どろ高、書籍版は4巻全て装丁が違っていて素敵です。現在は特装版上下巻もあるのでお好きな方を。

 図書委員としてよりは各キャラクターに着目したゆるい青春コメディです。合間に読書、アニメ、ゲームのあるあるネタなんかをふんだんに含んでいます。先程の千歳ヲチコチ孔子をネタにしてる辺りでもそうですが、着眼点が独特で笑わせてくれます。爆笑というよりはクスりとできて、なんとなく思い出してしまうようなお話です。

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人名と文化の名前とか混同しがちなのちょっとわかる。

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自分の知ってる単語を当てはめるのもあるある。

 ドラマチックな要素はあまり無く、ゆったりとした時間を楽しむ感じの作品ですね。

 他には短編集や単巻の作品があります。

 

短編集では千歳ヲチコチのようにゆるい雰囲気の平安時代の短編もありますが、

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矢継ぎ早のリリーより、「鞠めづるヒトビト」蹴鞠を巡るあれやこれや。

 

どちらかというとダークな内容の短編も多いです。
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矢継ぎ早のリリーより、「或ル婦人」不吉な未亡人に金を借りに行く男の話。

 

 私はゆり子には内緒に収録されている「こゆび姫」が好きですね。

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病院でこゆび姫が想い出を語るお話。

 

 雰囲気の違った作品を楽しみたい方はぜひ短編集の方も手にとってみてください。

 ちなみに様々な作品の試し読みができる冊子も電子版が配信されているのでよろしければこちらを読んでみるのもいいと思います。

漠然とした平安時代のイメージをゆるく楽しげなイメージに固めてみませんか?